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エクソソームの形状分布解析に成功

 
新しいがん診断指標として期待

公開日:2021.05.12

 

研究成果 Life & Health Physics & Chemistry

 九州大学先導物質化学研究所の龍崎奏助教・玉田薫教授、名古屋大学大学院工学研究科生命分子工学専攻の安井隆雄准教授・馬場嘉信教授、大阪大学産業科学研究所の筒井真楠准教授・谷口正輝教授・川合知二招聘教授、東京医科大学医学総合研究所の落谷孝広教授らの共同研究グループは、体液中に存在するエクソソームと呼ばれる生体粒子の形状分布が、がん診断の新しい指標として使える可能性を発見しました。
 エクソソームとは細胞から分泌される直径100 nm程の粒子で、血液や尿などの体液中に存在しています。これまで電子顕微鏡によって様々な形を有するエクソソームが観察されてきましたが、溶液中(体液中)に分散しているエクソソームの形状を計測する技術はありませんでした。今回、当研究グループは、独自に開発してきたナノポアデバイスと呼ばれる1粒子形状解析技術を用いることで、肝臓がん細胞、乳がん細胞、大腸がん細胞、乳腺細胞由来のエクソソームの形状分布を計測することに成功し、さらにその形状分布がそれぞれ異なっていることを発見しました。例えば、肝臓がん細胞由来のエクソソームは、球状粒子とラグビーボールのような楕円球状の粒子が混在していましたが、乳がん細胞由来のエクソソームは球状粒子のみでした。また、乳がん患者と健常者の血中エクソソームを比較したところ、異なった形状分布をしており、今回の実験では乳がん患者と健常者の識別が可能でした。今後、さらに様々なエクソソームを計測する必要がありますが、本研究により、体液中エクソソームの形状分布を調べることで体内のがんを検出し、さらにそのがんの種類も特定できる可能性が示唆されました。
 本研究成果は、2021年 4月28日(米国東部時間)に、アメリカ化学会(ACS)が出版する 「Analytical Chemistry」にRapid discrimination of extracellular vesicles by shape distribution analysisというタイトルで公開されました。本研究は、主に科学技術振興機構(JST)さきがけ(JPMJPR17HC)と日本学術振興会科学研究費(15H05417)の支援を受けて行われました。

本研究の概略図。ナノポアデバイスはナノスケールの穴(ナノポア)に粒子を通過させ、その際にナノポアを流れているイオン電流の変化(図右下)から通過粒子の形状を解析します。今回はこの技術でエクソソームの形状分布を計測し、最終的に体液中のエクソソーム形状分布からがんを検出できる可能性が示唆されました。

研究者からひとこと
今回の結果は、物理学や医学など様々な分野の先生方と共同研究させて頂くことで得られた研究成果です。今後も多角的な視点をもって、簡単にがんを見つけられる検査技術の確立に取り組んでいきます。

論文情報

タイトル:
著者名:
Sou Ryuzaki, Takao Yasui, Makusu Tsutsui, Kazumichi Yokota, Yuki Komoto,
Piyawan Paisrisarn, Noritada Kaji, Daisuke Ito, Kaoru Tamada, Takahiro Ochiya,
Masateru Taniguchi, Yoshinobu Baba, Tomoji Kawai 
掲載誌:
Analytical Chemistry 
DOI:
https://doi.org/10.1021/acs.analchem.1c00258 

研究に関するお問い合わせ先

先導物質化学研究所 龍崎 奏 助教