Research Results 研究成果
概要
二酸化炭素(CO2)の排出量は世界で増加し続けており、これを再利用する手段として注目されているのがCO2の水素化によるメタノール合成です。メタノールは今後、エネルギー媒体として、再生可能エネルギーを用いた社会において重要な役割を担うと期待されています。CO2の水素化によるメタノール合成では、銅(Cu)系触媒が用いられますが、反応温度の低温化と転換効率の向上が求められており、そのためには、反応メカニズムを明らかにすることが不可欠です。
本研究では、触媒の表面上でCO2の水素化が進行する反応メカニズムの概略を明らかにすることに成功しました。Cu(111)というモデル触媒を用いて、①モデル触媒の冷却、②水素原子による反応中間体の水素化、③反応中間体のエネルギー解析、の3つの戦略に基づいたアプローチをとりました。これらの実験結果に基づいて反応過程のエネルギーダイアグラムを作成し、実際の触媒から得られる実験値と合致することが分かりました。また、実験と第一原理計算の結果を解析し、CO2からフォーメート(HCOO)、ジオキシメチレン(H2COO)への水素化が、CO2水素化によるメタノール合成の素過程を構成し、全体の反応速度を決める過程であることを明らかにしました。
今後、本研究結果に基づいて、フォーメート(HCOO)からジオキシメチレン(H2COO)への水素化過程を加速する触媒や反応システムを構築することで、CO2の水素化によるメタノール合成を低温化し、転換効率を高めることを目指します。
掲載論文
【題 名】 Hydrogenation of formate species using atomic hydrogen on a Cu(111) model catalyst.(Cu(111)モデル触媒表面上における原子状水素によるフォルメート種の水素化)
【著者名】 Kotaro Takeyasu⋆, Yasutaka Sawaki⋆, Takumi Imabayashi, Seputia Eka Marsha Putra, Harry Handoko Halim, Jiamei Quan, Yuji Hamamoto, Ikutaro Hamada, Yoshitada Morikawa, Takahiro Kondo, Tadahiro Fujitani, and Junji Nakamura* (⋆: Equal contribution
【掲載誌】 Journal of the American Chemical Society
【掲載日】 2022年6月28日
【DOI】 10.1021/jacs.2c02797
研究に関するお問合せ先
カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所 三井化学カーボンニュートラル研究センター 中村 潤児 教授