Research Results 研究成果

ミクロな揺らぎのさらに小さい構造に迫る

ープラズマ基礎実験の新展開― 2022.12.22
研究成果Technology

概要

 プラズマ中でイオンと電子がつくるさまざまな大きさの"揺らぎ"の特徴を明らかにすることは、核融合発電の実現などにおいて重要な課題です。プラズマ中の揺らぎの研究は、大型ヘリカル装置のような大規模実験装置に加え、小規模な基礎実験装置でも精力的に行われています。核融合科学研究所の河内裕一特任助教、日本大学の佐々木真専任講師、九州大学の小菅佑輔准教授、京都大学の稲垣滋教授らの共同研究グループは、九州大学の直線型基礎プラズマ装置PANTA*において、従来研究されてきたイオンの運動サイズのミクロな揺らぎよりも、さらに100分の1小さい、電子の運動サイズの揺らぎの時空間構造を、世界で初めて詳細に観測することに成功しました。本研究は、大規模装置では観測が困難である電子の運動サイズの揺らぎを、小規模な基礎実験装置で観測可能な大きさに拡大することにより実現しました。本研究成果は、核融合研究のみならず、揺らぎに伴う宇宙プラズマの諸現象の解明にも大きく貢献することが期待されます。
 この研究成果をまとめた論文がScientific Reportsに12月12日に掲載されました。

本研究の模式図。基礎プラズマ装置PANTAにおけるプラズマとその中に存在する揺らぎを示している。従来の研究ではイオンスケール揺らぎの観測を行ってきた(左)。本研究では、従来の研究に比べて磁場を弱くしており、それに伴って揺らぎの大きさが拡大されている(右)。これにより、電子スケール揺らぎの観測が可能となった。(©核融合科学研究所)

用語解説

※基礎プラズマ装置PANTA
九州大学応用力学研究所にある共同利用実験装置で、ヘルムホルツコイルによって均一な直線磁場を形成し、高周波によって円柱状の高密度(1019m-3)・低温(1万度)プラズマを生成している。国内唯一、世界でも有数の、プラズマ中の揺らぎの基礎研究に特化した実験装置で、超多チャンネルの電極アレイや反射計、可視光トモグラフィなどの揺らぎ計測のため多様な計測器を数多く有している。PANTAはPlasma Assembly for Nonlinear Turbulence Analysisに由来する。

論文情報

雑誌名:Scientific Reports
題名:Spatiotemporal dynamics of high-wavenumber turbulence in a basic laboratory plasma(基礎実験室プラズマにおける高波数乱流の時空間ダイナミクス)
著者名:河内裕一1、佐々木真2、小菅佑輔3,4、寺坂健一郎5、西澤敬之3,4、山田琢磨6、糟谷直宏3,4、文贊鎬3,4、稲垣滋7
1 自然科学研究機構 核融合科学研究所、2 日本大学生産工学部、3 九州大学応用力学研究所、4 極限プラズマ研究連携センター、5 九州大学大学院総合理工学府、6 九州大学基幹教育院、7 京都大学エネルギー理工学研究所
DOI:10.1038/s41598-022-23559-1