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Research Results 研究成果
名古屋大学大学院工学研究科(研究科長:新美智秀)化学・生物工学専攻 馬場 嘉信(ばば よしのぶ)教授、加地 範匡(かじ のりただ)准教授らの研究グループは、大阪大学産業科学研究所 川合 知二(かわい ともじ)特任教授、九州大学先導物質化学研究所 柳田 剛(やなぎだ たけし)教授、北海道大学大学院工学研究院応用化学部門 渡慶次 学(とけし まなぶ)教授のグループらと共に、ナノピラー・ナノスリット技術を用いて、細胞内に含まれる核酸成分から、新しいバイオマーカーとして期待されているマイクロRNA(miRNA)のみを20ミリ秒以内という超高速で抽出することに成功しました。
miRNAは、22塩基程度の長さを有する、タンパク質に翻訳されないノンコーディングRNAのひとつであり、他の遺伝子の発現を調節する重要な役割を担っています。特に最近では、このmiRNAとがんの発症に高い相関性が見られることが示唆されており、がん診断のための新しいバイオマーカーとして注目を集めています。
これまでにもmiRNAは、シリカビーズなどを用いた固相抽出法により抽出されていましたが、数十μL以上のサンプル量と人の手による操作が必要であり、現在開発されている1分子レベルでDNAやRNAの塩基配列を解読できるナノポアシーケンサーへの前処理操作として適用するには、サンプル量や連続操作の問題などが立ちはだかっていました。
今回開発したナノバイオデバイスは、半導体分野で用いられる超微細加工技術を使い、ナノピラーが生み出す2次元ナノ空間の核酸分離原理に、3次元方向にナノスリットを併せて作製することで異なった核酸分離原理を付与し、これらの相乗効果により従来では数十秒かかっていたmiRNAの分離・抽出工程を100ミリ秒以内に行うことを実現し、がんのバイオマーカーとして知られるlet-7をわずか20ミリ秒で抽出することに成功しました。
このナノバイオデバイスでは、数pL(10-12L)程度のサンプル量からmiRNAを抽出することができるため、1細胞から目的のmiRNAを抽出し、さらに1分子レベルで核酸の塩基配列解読可能なナノポアシーケンサーをはじめとした機器へ一体化することで、本格的な1細胞解析を可能にする技術となることが期待されます。
今回の研究成果は、2017年3月8日(英国時間午前10時)発行の、英国の国際学術誌『Scientific Reports』誌(電子版)に掲載されました。また本研究は、総合科学技術会議により制度設計された最先端研究開発支援プログラムにより、日本学術振興会を通して助成されたものです。
図.(A)ナノピラー・ナノスリットを搭載したナノバイオデバイスの写真。(B)ナノピラー・ナノスリット構造部分の模式図。(C)様々な長さのDNA混合物とマイクロRNAの分離結果。(D)細胞から抽出した核酸からのマイクロRNAの分離・抽出結果。