Research Results 研究成果

どこでもいつでも無線で電⼒伝送可能な技術

新たなメタサーフェスの実現と無線電⼒伝送技術への有効性の確⽴ 2023.10.26
研究成果Technology

ポイント

  • 従来型無線電⼒伝送システムには伝送効率、伝送距離、ミスアラインメントで電⼒伝送ができないという問題ありました。
  • 上記の問題を対処するため、新たなメタサーフェスを開発し、それらを⽤いて磁場の制御に成功しました。
  • タブレット、携帯などを机に置くだけで充電可能な技術の開発が期待されます。

概要

 スマートフォンや医療機器などの⼩型デバイスの普及に伴い、充電の⽅法が有線から無線へと移⾏しています。このようなシステムでは、無線電⼒伝送(※1)が不可⽋ですが、WPT システムを⼩型化することで電⼒伝送効率が低下し、遠距離での電⼒伝送に制約が⽣じていました。また、受信機と送信機の位置のずれにより、電⼒伝送が妨げられる問題も存在しました。本研究では、新たなメタサーフェス(※2)を開発し、⼩型化されたWPT システムに導⼊することで、元の伝送効率を維持しながら、最⼤300%まで伝送距離を向上させることに成功しました。具体的には、メタサーフェスを導⼊する前の40mm の伝送距離での伝送効率が8%だったものが、メタサーフェスを応⽤することで78%まで向上しました。さらに、受信機と送信機の位置ずれによるミスアラインメント(※3)の問題も、開発したメタサーフェスの応⽤により⼤幅に改善されました。このような新たなWPT システムの性能向上は、当該分野においては画期的な成果となりました。
 九州⼤学⼤学院システム情報科学研究院Ramesh Pokharel(ポカレル ラメシュ)教授のグループと共同研究者のMohamed Aboualalaa(モハメド アブアララー)外国⼈特別研究員が、メタサーフェスの設計を⾏い、無線電⼒伝送システムの送信器と受信器の間の磁場を制御することにより、無線電⼒伝送距離およびミスアラインメント問題が解決されることを明らかにしました。
 本研究成果は⽶国の雑誌「IEEE Transactions on Instrumentation and Measurement」に2023年10⽉17⽇(⽔)午前10時(⽇本時間)に掲載されました。

用語解説

(※1) WPT システム:Wireless Power Transfer は、電⼒を物理的な接触なしで伝送する技術です。
(※2) メタサーフェス:負や零と近い透磁率を有する⼈⼯誘電体のことを⽰します。
(※3) ミスアラインメント:ミスアラインメントとは、送信側と受信側のコイルやアンテナが完全に⼀致していない場合や、位置がずれている場合を指します。このミスアラインメントが⽣じると、伝送効率の低下、熱の問題、通信の中断が送る可能性があります。

論文情報

掲載誌:IEEE Transactions on Instrumentation and Measurement
タイトル:Reliable Multiple Cascaded Resonators WPT System Using Stacked Split-ring Metamaterial Passive Relays
著者名:Mohamed Aboualalaa and Ramesh K. Pokharel
DOI:10.1109/TIM.2023.3324672