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化学の力で持続可能なプラスチックをー国際化学サミット白書「Science to Enable Sustainable Plastics」が公開されましたー

2020.06.08
トピックス

国際化学サミットの参加者

 プラスチックは現代社会には様々な用途で使われています。食物を新鮮かつ安全に運ぶ容器から、自動車や電子機器に必要不可欠な部品、マスクや防護服、人工臓器、ECMOなど先進的医療を可能にし、人々を保護するものまで、持続可能な社会を形成するための重要な要素となっています。一方で、地上で生み出され放出されたプラスチックが、マイクロプラスチックやナノプラスチックとなり、環境汚染問題を引き起こしていることも研究で明らかになっています。
 これらの問題を化学で解決し、持続可能なプラスチックを実現すべく、「Science to Enable Sustainable Plastics(持続可能なプラスチックのための科学)」を主題として取り上げた Chemical Sciences and Society Summit(CS3:国際化学サミット)の白書が、2020年6月3日に公開されました。
 CS3 は化学の領域で最先端の化学者が集まり、世界が直面する重要課題を取り上げ、少人数で解決に資する糸口を探ると共にその成果を広く公表することを目的とした会議体です。日本化学会、科学技術振興機構(JST)のほか、英国・ドイツ・中国・米国の主要化学会と各国のファンディングエージェンシーの全 10 機関で会議メンバーは構成されています。日本からは佐藤浩太郎教授(東工大)、沼田圭司博士(理研)、吉岡敏明教授(東北大)、日向博文教授(愛媛大)、高原淳教授(九州大)、澤本光男教授(日本化学会)、中村亮二氏(JST)、宮下哲氏(JST)が参加しました。
 英国王立化学会の Burlington House で2019 年 11月10日から13日に開催した今回のサミットには、諸事情により米国は不参加となりましたが、日英独中の 4 ヵ国が参加しました。
 主題に加え、サブテーマとして「プラスチックの環境負荷」、「新しい持続可能なプラスチック」、「プラスチックのリサイクル特性」、「プラスチックの劣化」の 4つの分科会が開催されました。分科会ごとにキーノート(KN)とポジショントークが3~4件という構成になっており、総勢約34名で4日間にわたり議論が行われました。今回の議長はオックスフォード大学の Charlotte Williams教授がつとめ、日本のリーダーとして九州大学先導物質化学研究所の高原淳(たかはら あつし)主幹教授がつとめました。

日本からの参加者

◆研究者からひとこと
 2019年度末からのCOVID-19感染拡大の中でこれまで使用を控えていたシングルユースプラスチックである包装材などが食の安全を確保するために使われ、マスク、防護服、注射器、ECMO用人工肺、血液回路などの様々なディスポーザブル医療器具が多くの命を救っています。
 今後、これらの安心・安全に必要不可欠なプラスチックの廃棄物処理は大きな課題となり、このような安心・安全のためのシングルユースプラスチックを社会でうまく活用しながら環境に流出しないような努力が重要となります。
(九州大学先導物質化学研究所 主幹教授 高原 淳)

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先導物質化学研究
主幹教授 高原 淳
Mail:takahara★cstf.kyushu-u.ac.jp
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