専門性を絞らないからこそ、
興味のある分野(生物学)に巡り合えた

専門性を絞らないからこそ、興味のある分野(生物学)に巡り合えた

2022.07.20

九州大学校内にて、 中込 睦生(なかごみ むつき)さん

PROFILE

インタビュイー:中込 睦生さん

所属:共創学部共創学科

進路:【進学】大学院生物資源環境科学府

今から4年前、2018年4月に九州大学は新たに「共創学部」を設置しました。多様化・複雑化するグローバル社会において、多様な人々との協働から異なる観点や、学問的な知見の融合をはかり、ともに構想し、連携して新たなものを創造する「共創」をコンセプトとして、新たなイノベーション人材の育成に取り組む学部です。そんな同学部では、2022年3月に第1期生らが卒業するとのことで、国や産業界、ほかの大学からもその活動内容や、就職先が注目を集めています。

そのひとりが、中込 睦生(なかごみ むつき)さん。食糧不足や貧困など国際問題に高い関心をもつ彼は、卒業研究では農学研究院の中村 真子(なかむら まこ)准教授のもと培養肉を研究。4月からは、同分野の学習を深めるべく「九州大学大学院生物資源環境科学府」に進学しました。

国際問題とその解決策を学ぶため共創学部に

九州大学校内にて、中込 睦生(なかごみ むつき)さん

高校生の頃から国際的な課題、その解決のための活動に興味があった中込さん。しかし、誰もが進路について考えさせられる高校3年、彼もまたほかの学生と同様に「国際問題に興味はあるけれど、何を、どのように学べばいいか……」と漠然とした目標に悩まされていました。そんな時、全国の大学について調べていたところ、九州大学が新たに共創学部を設置することを知ります。同学部では習熟レベル・能力別で徹底した語学学習を実施するほか、すべての学部生に海外留学を必須とし、異なる文化での学び、活動する機会を設けていること。また、環境や食糧、人権など地域や国を超えた課題に自ら考え、そして他者とも協働して解決を目指せる、実践的な協働学習も実施していることなどに深く共感し、中込さんは共創学部を進学先として選択しました。

共創学部では「人間・生命」「人と社会」「国家と地域」「地球・環境」の大きく4つのエリアを設けつつも、さらにエリア間を横断的に学べる環境を構築しています。その中から、中込さんが選択したのは、生命の発生・進化や、人の思考・認知・判断の仕組みなどを生物学、認知科学、脳科学などを通して学べる「人間・生命エリア」です。入学当初、国際問題に興味はあるものの、課題解決の方法についてまでは不明確なままで、その先の進路についてはあまり考えられていなかった彼でしたが、さまざまな分野の講義を受けるなかで、今の指導教員となる中村准教授と出会います。准教授は主に生物学の講義を担当しており、講義の内容や、准教授の研究について説明を受けた彼は「生物学って面白い!」と純粋に生物学の魅力に惹かれました。また、「(准教授の研究内容でもある)食肉という観点からなら、世界の食糧問題や貧困を解決できるのでは」とこれまで漠然としていたものが明瞭になるのを感じ、准教授のもとで生物学を学ぶことにしたそうです。

生物学をより深く研究するため大学院に進学

九州大学校内にて、中込 睦生(なかごみ むつき)さん

大学の学部生は3年生の終わりから、4年生の初めごろにかけて大学院に進学するのか、それともどこかの企業に就職するのかを考える時期を迎えます。その頃、中込さんは中村准教授のもと研究を始めていた時期で、「(生物学を)もっと研究したい!もっと深く学びたい」とすでに思っていました。そのため、とくに進路で迷うことはなく引き続き、准教授のもとで培養肉や、それに近しい分野を研究できる「九州大学大学院生物資源環境科学府」に進学を決めたそうです。

しかし、当然ながら大学院にも試験はあり、基準を超えられなければ入学は認められません。そこで立ちはだかったのが、専門性の壁でした。「共創学部はどちらかというとあらゆる分野を広く、浅く学べるところです。そのため、1年生から特定の分野、専門領域を極めて深く学習してきたほかの学部生と比べると、私はどうしても知識や、経験に差を感じていました」と大学院入試の勉強では、農学部の学部生らに追いつくのに苦労したといいます。ただ、これはけして弱みではなく、むしろ共創学部の強みになりえるものです。同学部ではあらゆる分野に興味をもつ人材が集まり、文理の壁さえ超えて互いに意見を出し合い、協働しながら同じ課題に取り組みます。環境や食糧、人権など世界中にある課題はどれひとつとっても、さまざまなバックボーンが複雑に絡みあい、絶え間なく変化しており、ひとつの方向からだけではけして解決できません。共創学部のなかでさまざまな分野を学び、そして多様な考えをもつ人々と触れ合うことで、しなやかな知性を身につけた中込さんは、専門領域に固執しがちな今日の研究・開発現場において、多様な視点でそれらを飛び越え、新たな知見を発見できる可能性を秘めた人材として期待されています。

将来も国際問題に関われるような活動が目標

九州大学校内にて、中込 睦生(なかごみ むつき)さん

「何が、とはまだ明確ではないのですが今、研究している細胞関係に関われなくても、そのほかの形であってもいいので今後も、国際問題に携われるような活動を続けたいです」と中込さん。共創学部での分野横断的な学習のなかで生物学の面白さと出会い、4月からは大学院でさらに専門性の高い研究ができる環境を得た彼はすでに、その先を見据えた活動に意欲を示しています。

そんな中込さんは最後に、進路に悩みを抱える後輩らに向けて「(高校3年生のとき)私も、そうでした。将来、何をすればいいのか不透明で……。でも、共創学部で生物学という興味を見つけ、そこから自らの道が少しずつですが明確になりつつあります。今、やりたいことが見つけられてなくてもいいんです。むしろ、そういう人こそ共創学部のようにいろいろな分野に広く、浅く触れられる環境は目標を見つけるきっかけになるのでは、と思います」とエールを送りました。

取材/執筆 堀本一徳(TRUNK.)

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