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九州大学初・箱崎の近代建築物群が国の登録有形文化財に ~ 地域に開かれた新たな学びの拠点へ ~

2022.11.18
トピックス

 九州大学旧箱崎キャンパス(現箱崎サテライト)で長く親しまれた近代建築物群が、「造形の規範となっているもの」として、国の登録有形文化財(建造物)に登録される見通しとなりました。福岡市内でも最大級の現存する近代建築物であるとともに、九州大学の所有する建造物では初めての登録有形文化財※1となります。

 登録対象の建造物は、鉄骨鉄筋コンクリート造の初期の例であり、大学のシンボルにふさわしい外観の「旧九州帝国大学工学部本館」、煉瓦造の赤い壁が美しい「旧九州帝国大学本部事務室棟」、本部事務室棟の兄弟建築である「旧九州帝国大学本部建築課棟」、大正3年に完成し、のちに曳家された「旧九州帝国大学門衛所」です※2。

 本学ではこれらの近代建築物群が立地するゾーンを「箱崎サテライト」と名付け、学内外に開かれた新たな学びの拠点として活用していくこととしています。
 今回の発表も踏まえ、箱崎サテライトをより魅力ある場所としていけるよう、ふさわしい活用方法を検討してまいりますので、皆様には一層のご支援とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

 ※1 登録有形文化財(建造物)...50年を経過した歴史的建造物のうち一定の評価を得たものが登録され、
    保存を図り
つつ、積極的に利活用することで、建物の魅力を広く知ってもらう目的をもつもの。
 ※2 「 」内は文化財登録名称を示す。

箱崎サテライト 近代建築物(令和5年3月 登録有形文化財登録見込み)

旧九州帝国大学工学部本館
建設:1930年(昭和5年)
規模:地上3階 地下1階 塔屋付
構造:鉄筋コンクリート
   一部鉄骨鉄筋コンクリート
設計:倉田 謙、小原 節三
施工:清水組(現 清水建設)

 初期の鉄骨鉄筋コンクリート造の建物として全国的にも貴重。九州大学の代表的建築物
 であり、工学部設立のシンボルでもある。諸室の中でも大空間をなす大講義室は圧巻。
 正面玄関などを中心に質の高い意匠が施され、技術力の高さが窺えるタイルなど見所が多い。
 内部の装飾や家具、照明なども華を添える。箱崎キャンパスの顔として重要な役割を担う。


旧九州帝国大学本部事務室棟
建設:1925年(大正14年)
規模:地上2階
構造:煉瓦
設計:倉田 謙
施工:佐伯工務所(現 佐伯建設)

 大正12年に焼失した旧工科大学本館の煉瓦や礎石を転用して旧観を復すように再建された。
 煉瓦造の要式性・装飾性をよくとどめており、煉瓦造最後期の建築物として価値が高い。
 玄関上部のアーチ、階により異なる形態の窓など変化のある意匠が特徴的。歴史的経過が
 分かりやすく銘板に記される。工学部本館と対をなす配置の建物である。


旧九州帝国大学本部建築課棟
建設:1925年(大正14年)
規模:地上2階 地下1階
構造:煉瓦
設計:倉田 謙
施工:佐伯工務所(現 佐伯建設)

 本部事務室棟に併設された建造物で、大正12年に焼失した旧工科大学本館の煉瓦等が
 再利用されている。


旧九州帝国大学門衛所
建設:1914年(大正3年)
規模:地上1階
構造:煉瓦
設計:倉田 謙
施工:鴻池組

 箱崎サテライト最古の建造物であり、歴史的意匠が高密度に残されている。


箱崎サテライト(旧箱崎キャンパス)での各近代建築物の位置

 (参考資料)
   旧九州帝国大学(現国立大学法人九州大学箱崎サテライト)近代建造物群について

 九州大学記者クラブ向けに現地説明会を実施

 【日時】   11月15日(火)14:00~16:00
 【場所】   九州大学箱崎サテライト 旧工学部本館3階第一会議室
   【説明者】 人間環境学研究院 都市・建築学部門 堀 賀貴(ほり よしき)教授

堀 賀貴 教授

工学部本館 4F会議室で説明する様子

工学部本館 玄関ポーチで説明する様子

記者に説明する様子

堀教授より一言 ~九州大学の新たな歴史へ~

人間環境学研究院長・堀教授

 このたび文化財登録の見通しとなったこと、大変嬉しく思います。登録予定の建築物群は、九州大学の顔として長く市民にも親しまれてきたものです。それぞれの建物の価値はもちろん、倉田謙くらたけんという当時の建築課長がすべての建物の設計を統括している点が特徴的です。草創期の九州帝国大学には、東京帝国大学の建築学科卒業のエリート集団で構成される日本でも有数の建築設計組織がありました。倉田謙はその組織を長年にわたり率いて、坂部保治さかべやすじ小原節三おはらせつぞうなど若い技師たちの才能を融合させながら、九州帝国大学の「シンボル」ともいえる建物群を設計しました。
 特に、本部事務室棟と旧工学部本館は、前者は辰野金吾たつのきんご以来の伝統的な様式建築を踏襲したもの、後者は倉田謙が欧米視察の経験をもとに小原節三の造形力を活かして設計したものです。古典的な様式と当時の世界最先端のデザインが中庭をはさんで対をなすように向かい合っており、まるで建物どうしが対話をしているようにも思えます。
こうした建物の配置を通じて、九州大学が世界とつながっていたこと、そして伝統を重んじながらも、新しいことに挑戦する、九州大学の姿を現していたようにも感じられます。

 今後、建築物群は「箱崎サテライト」と名付け、地域に開かれた新たな学びの拠点へとして、その活用法を検討していくこととなります。ここから、九州大学の新たな歴史をつくってまいりたいと思いますので、皆様には一層のご支援とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

近代建築物の保存活用プロジェクト ~箱崎サテライト旧工学部本館改修支援事業~

 箱崎サテライトを学内外のより多くの皆様に快適かつ安全にご活用いただけるよう、九州大学ではこれらの建物について整備を計画しており、まずは工学部本館から改修することといたしました。皆様にはどうぞご支援を賜りますようお願い申し上げます。

工学部本館正面外観(東)

工学部本館正面玄関ポーチ天井部

工学部本館1F大講義室(後方より臨む)

工学部本館4F会議室(南から北を臨む)

 ●基金使途
  旧工学部本館の改修工事費の一部として活用
 ●募集期間
  2026年3月31日まで
 ●目標額
  1億円
 ●募集金額
  個人:1口1,000円、法人等:1口 100,000円(いずれも何口でも可)

 詳細は九州大学基金HPをご覧ください。

お問い合わせ

【国の登録有形文化財の登録に関すること】
九州大学施設部施設企画課
TEL:092-802-2082 email: sskkeika2@jimu.kyushu-u.ac.jp

【箱崎サテライト旧工学部本館改修支援事業に関すること】
九州大学総務部同窓生・基金課
TEL:092-802-2150 email : k-kikin@jimu.kyushu-u.ac.jp