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サイバーフィジカルシステムを実装する 次世代スマート工場をグループ全体に適用

九州大学、ロート製薬、ファーストループテクノロジーの共同 2022.10.26
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九州大学マス・フォア・インダストリ研究所 藤澤研究室(教授:藤澤克樹、以下、九大)とロート製薬株式会社(社長:杉本雅史、以下、ロート製薬)及びファーストループテクノロジー株式会社(社長:福永哲雄、以下、FLT)の3社は、2022年6月よりサイバーフィジカルシステム:Cyber Physical System(以下、CPS)※1を実装するロート製薬グループ全体のスマート工場化の取り組みを開始しました。
※1:CPSとは、フィジカル空間(現実空間)にある多様なデータをセンサーネットワーク等で収集し、サイバー空間
  (仮想空間)で大規模データ処理技術等を駆使して分析/知識化を行い、そこで創出した情報/価値によって、
   産業の活性化や社会問題の解決を図っていく仕組みです。

図1 CPSの概念

 九大およびFLTの知見を活かし、まずロート製薬のマザー工場である上野テクノセンターにてCPSを実装させ、今後はそれをロートグループすべての工場に取り入れ、工場のスマート化を実現させてまいります。目薬などの無菌製造工程に加え、新規事業で取り組んでいる再生医療・細胞培養、創薬・発酵技術、植物・食品などのバイオ分野におけるCPSの適用の可能性は大きいものと考えております。
 具体的には、IoTやセンサ技術を活用して、ヒトやモノ、プロセスを可視化、データ化したものを蓄積し、AI、ディープラーニングによって作業や動線、ライン配置、負荷シミュレーションを行います。つまり、現実空間で収集され、仮想空間で蓄積・分析されたデータから最適化された生産プロセスが提案され、それを現実空間で活用するというサイクルを行うことで、生産性の向上が期待できます。
 その結果、工場で働く人はもちろん、調達・製造・管理・配送・販売のサプライチェーン全体に関わる会社の方々、製品やサービスをご利用いただくお客様のウェルビーイングの向上に繋げてまいります。

■上野テクノセンターにおけるCPS実装

 ロート製薬がCPSを実装して工場のスマート化を目指す背景として、日本における労働力減少、技能・技術承継問題、労働価値観の多様化、地域社会への貢献、お客様のウェルビーイングを目指したモノづくり、また、グローバルには地政学リスク、複雑拡大したサプライチェーンリスク及び環境負荷低減等の複合的課題へ対処しつつ生産性の維持向上を図ることが挙げられます。
 従来多くの研究機関、企業等が取り組んできたデジタル化において、プロセス毎に人がサイバー空間にアクセスして情報を入手・分析する方法では、フィジカル空間へのフィードバックが不十分であり便益が最大化されませんでした。
 そこで、CPSを実装することにより、「ヒト」「モノ」の流れや「振る舞い」に対して可視化、シミュレーション、最適化、さらに価値化を行うことによりフィジカル空間とサイバー空間がリアルタイムにデジタルループ化し、プロセスの連動性を高めることによりスピーディに、便益を最大化することが可能になります。

図2 上野テクノセンターで実装段階にあるCPS関連技術の一例

■グループ全体へCPS実装を適用することで期待される効果

 CPS実装により得られる効果は、人と機械や計算機が適切に融合し働く人に受容される仕組みづくりにより、サプライヤー、物流、製造、販売及び研究開発等のプロセス間の連動性が高まり、プロセス内やプロセス間の無理、ムラ、無駄が適切に改善され、便益の最大化を図ることにより、働く人々や製品・サービスを利用するお客様が持続的にウェルビーイングを実感できるロート製薬のモノづくりを実現します。

図3 工場のスマート化の将来像

図4 CPS実装前後

■ロート製薬グループのスマート工場に適用するCPSの強み
①最新の数理・情報技術(AI等)をシームレスに結合可能
 最新の数理最適化、AI等の情報技術における研究成果を実工場で即時検討して反映できる
 ことが特徴です。また、量子コンピューティング技術を活用し、スマート化に関わる最適
 化の高速計算や深層学習の精度向上が可能となります。


②働く一人ひとりがモノづくりにおいて当事者意識を持つことができること
 CPSの実装により、過度に緊張を強いられる仕事や単純な繰り返しの仕事を軽減されま
 す。同時に、CPSとの連係により一人ひとりの得意な能力が向上し、お客様起点のモノ
 づくりに集中でき、お互いを高く評価し尊敬し合える人であふれた工場の実現が可能と
 なります。
■CPSの段階的実装

CPSの実装は、マザー工場である上野テクノセンター新工場棟を皮切りに段階的整備を推進します。

CPS 1.0:先行課題でトライアル(上野テクノセンター新工場棟) 実装時期:2023年3月
CPS 2.0:マザー工場のスマート化(上野テクノセンター全体) 実装時期:2025年3月
CPS 3.0:バリューチェーン強化(グループ全体) 実装時期:2031年3月

図5 CPSの段階的開発整備計画

ロート製薬株式会社
代表者 :代表取締役社長 杉本 雅史
事業内容 :医薬品・化粧品・機能性食品等の製造販売
関連リリース :ロート製薬のマザー工場、上野テクノセンターの新工場棟が稼働開始~I・IoTやAI、地中熱を活用した「人と環境にやさしいスマート工場」~


国立大学法人九州大学 マス・フォア・インダストリ研究所 藤澤研究室
研究室代表 :教授 藤澤 克樹
研究室概要 :数理最適化や機械学習、高性能計算及び産業アプリケーション創出
関連研究成果 :The 6th RIKEN-IMI-ISM-NUS-ZIB-MODAL-NHR Workshop on Advances in Classical and Quantum Algorithms for Optimization and Machine Learning, September 16th--19th, 21st-22nd, 2022 にて発表済

ファースト・ループ・テクノロジー株式会社
代表者 :代表取締役社長 CEO 福永 哲雄
事業内容 :フィジカル空間とサイバー空間とを連動させるデジタルループサービスの開発・提供

■上野テクノセンターについて
1999年に操業が始まり、今年で20年が経過した上野テクノセンターでは、ロート製薬の主力商品であるVロートプレミアムなどの目薬をはじめとする一般用医薬品や、肌ラボ極潤ヒアルロン液などのスキンケア製品を生産、品質管理・物流の拠点となるマザー工場として機能しています。2022年9月より新工場C棟が稼働開始し、CPS実装に向けて検証を進めています。