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日本の草資源を活用した黒毛和種牛での完全牧草牛の生産

2023.12.07
お知らせ

上段:26か月齢時のメス牛と枝肉 下段:26か月齢時の去勢牛と枝肉

 九州大学大学院農学研究院の村本匠、田口佑充、髙橋秀之准教授らはトゥルーバアグリ株式会社との取り組みの中で、出生後から出荷まで一貫した放牧と乾草給与のみで育てた黒毛和種牛の完全牧草牛を生産しました。今回の試験では放牧に適していないと考えられてきた黒毛和種牛において、乾草の給与を毎日行うことで増体が良くなる可能性が示されました。
 近年、輸入飼料の高騰や耕作放棄地の増加から放牧が再注目されています。しかしながら、いまだ日本での牧草牛の流通は少なく、黒毛和種牛を国産牧草のみで放牧飼育し、食肉として流通している例はほとんどありません。そこで本研究では黒毛和種牛を生涯を通して放牧させ、補助飼料として乾草を毎日給与することで国産牧草100%の完全牧草牛を生産しました。試験の結果、26か月齢時の体重は去勢牛で約580kg、メスで約440kgとなりました。以前、当研究室において黒毛和種牛を同様に牧草のみで飼育し、補助飼料として乾草をロールで給与した際のメス(26か月齢時)の体重は約340kgでした。一方、今回の試験では、哺乳期に乾草を食い込ませ、離乳後からも継続して乾草を給与することで大幅に増体が改善されました。今回の飼養管理ノウハウを用いることで、国産牧草のみでの放牧飼育においても増体が良くなる可能性が示されました。
 今回の飼養管理ノウハウは自給の国産牧草のみを用いていることから飼育コストも大幅に削減することができ、経営面においても優れた技術です。また、試験牛の格付けはどちらもB-2であり、近年の赤身肉需要の高まりに見合った赤身の強い牛肉を生産することが可能でした。今後は、黒毛和種牛での完全牧草牛の飼養管理ノウハウを技術移転していくことを目指します。
(特許出願, 牛の放牧飼養管理方法, 特願2023-193567)

研究者からひとこと
 放牧で飼養管理を行うことで、希少性の高い黒毛和種牛の赤身肉を生産することが可能となりました。しかし、いまだ放牧利用は少ないというのが現状です。本技術が放牧飼養管理の可能性が広がるきっかけになってくれると嬉しく思います。

お問い合わせ

大学院農学研究院 准教授 髙橋 秀之
電話:0974-76-1377
FAX:0974-76-1218
Mail:takahashi.hideyuki.990★m.kyushu-u.ac.jp
※メールアドレスの★を@に変更してください。