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2026年 総長年頭挨拶

2026.01.01
お知らせ重要

 明けましておめでとうございます。

 昨年末に本学の部局長が不祥事により、その職を辞する事案が発生しました。関係の皆さんにご心配をおかけしましたことを、心よりお詫び申し上げます。責任を深く受け止め、今後同様の事態が生じることのないよう、再発防止と信頼回復に努めてまいります。

 九州大学は2021年「Kyushu University VISION 2030」を策定し、学問分野・領域を越え、異なる複数の分野の研究者が共に共通の課題を解決する体制・組織を作りました。そして本学の特色・強みである「脱炭素」「医療・健康」「環境・食料」の分野で社会課題解決やイノベーションの創出に力を入れています。今年で5年目にはいります。

 昨年の大阪・関西万博では、「脱炭素」の研究成果であるナノ分離膜を用いて大気中のCO₂を直接回収してエネルギー等に再利用する「DAC-U(ダックユー:Direct Air Capture and Utilization)」装置がカーボンリサイクルファクトリー「RITE未来の森」に常設展示されました。予約制の見学ツアーは盛況で、この最先端技術は地球温暖化対策の革新的な技術として大きな関心を集め、「RITE未来の森」が第1回 EXPO INNOVATION AWARD「Expo Special Recognition Award for Cross-Sectorial Enlightenment(分野横断的啓発賞)」を受賞しました。藤川茂紀主幹教授をはじめ、チームの皆さんの成果を喜ばしく思っています。

 さらには、本学工学研究院の安達千波矢主幹教授が「2025年度江崎玲於奈賞」を受賞されました。安達主幹教授は、有機ELの新材料の開発からデバイス開発まで、長年にわたって取り組んでこられました。この研究成果を活用したスタートアップ(株式会社Kyulux)の設立を通して、基礎研究から生まれた成果を社会に実装することを自ら実現されています。この受賞は、これまでの先生のご努力が認められたことであり、私たちの誇りです。

 また、本学の大学院生チームが開発した消防団支援アプリ「REGIS(レジス)」が糸島市で本格運用が開始され、地域防災の要である消防団の皆さんの喜んでいただく成果に結びつきました。団員不足やアナログな連絡手段など、消防団の皆さんの日々の悩みを解決できるアプリ開発は、実用的な価値のみならず、論文として発表され、学術的な評価も得ています。本学が目指す、「総合知で社会変革を牽引する」ということを実行に移してくれた学生の皆さんに心から敬意を表します。

 大阪大学・坂口志文特任教授、京都大学・北川進理事・副学長のノーベル賞受賞は、私たち研究者、そして研究を志す学生、そして日本全体に大きな喜びと希望をもたらすニュースでした。両先生が数多くのインタビューの中で、基礎研究への関心と支援を訴えておられます。本学においても、基礎研究を大切に育てていかなければならないと、決意を新たにしたところです。

 国際卓越研究大学の公募も大きな出来事でした。残念ながら、本学は認定には至りませんでしたが、事業構想の立案にあたり、学内構成員や学外ステークホルダーと「VISION 2030」で示した将来像のその先について対話を重ねたことは、今後の本学の未来にとって意義あるものであったと考えています。

 「Kyushu University VISION 2030」の下、「総合知で社会変革を牽引する大学」として、九州大学の発展に教職員、学生の皆さんと共に、力を尽くしてまいりたいと思っています。

 本年もどうぞよろしくお願いいたします。

2026年1月1日
九州大学総長 石橋 達朗