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Notices お知らせ
KNN薄膜基板
住友化学株式会社(以下「住友化学」)と国立大学法人九州大学(以下「九州大学」)は、KNN(ニオブ酸カリウムナトリウム)を光電融合※1、特にコパッケージドオプティクス(CPO)※2向け光変調器の基幹材料として活用する可能性を共同で検証し、高い光変調効率と180 Gbaud※3の超高速動作を実証しました。これにより、KNNが次世代の光電融合デバイスに向けた有力な材料の一つであることが示されました。
生成AIの普及により、様々な領域でデータ処理の高速化・大容量化が求められるなか、特に膨大な情報量を扱うAIデータセンターにおいては、電力消費や情報処理負荷が世界的に大きな課題となっています。こうした課題を解決する切り札として注目されているのが、光電融合技術です。なかでも、電気信号を光信号に変換する光変調器は、CPOをはじめとする光インターコネクトに不可欠なデバイスの1つとして注目されております。一方で、現行のシリコンベースの光変調器では高速動作と低消費電力の両立に課題があり、これを打破する次世代材料が強く求められています。
こうした課題に対応するため、住友化学と九州大学先導物質化学研究所の横山士吉教授らの研究グループは、KNNが高い電気光学特性を有し、光変調器に適した特徴を持つことに着目しました。住友化学がKNN薄膜基板を作製し、九州大学がその基板を用いた光変調器デバイスの設計・作製および性能評価を担当する体制で共同研究を進めました。その結果、KNN薄膜基板を用いた光変調器において、180 Gbaud の超高速動作を実証するとともに、変調効率を示す指標である VπL※4は0.7 Vcm未満を達成しました。これは、次世代光変調器材料として研究開発が進むTFLN(薄膜ニオブ酸リチウム)※5と比較して約3倍※6の変調効率に相当し、KNNの有望性を示しています。
さらに、KNNは光変調器材料として高い性能を有するだけでなく、スパッタリング法による薄膜形成が可能で、既存の半導体製造プロセスとの親和性にも優れています。加えて、TFLN基板と比較して低コストで製造できると見込まれている点も大きな特長です。住友化学は、圧電MEMS※7用途で培った量産スケールの製造技術を有しており、実用化に向けた製造面でも優位性があります。
本研究成果は、スペインで開催された光通信技術に関する欧州最大級の国際会議 52nd European Conference on Optical Communications(ECOC 2026) において、Post Deadline Paper※8として採択されました。
これらの成果を踏まえ、住友化学と九州大学は、KNN薄膜基板を用いた光変調器の実用化に向けた取り組みを一層推進します。
住友化学は、これからもKNNの新たな用途展開を積極的に推進するとともに、ICT技術の発展を通じて、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
九州大学は、総合知で社会変革を牽引する大学として、多様な知と人材を結集し、社会課題の解決と社会・経済システムの変革に向けた挑戦を続けてまいります。
用語解説
※1 光電融合:電気回路と光回路を一体化して信号伝送を光に置き換え、消費電力を抑えつつ高速・大容量のデータ通信を可能にする次世代半導体・データセンター向け技術
※2 コパッケージドオプティクス(CPO):電気回路と光回路を一つのパッケージに統合する実装技術。チップ間の電気配線を短くすることで信号劣化を防ぎ、低消費電力かつ高速・大容量のデータ処理を可能にする
※3 Gbaud(ギガボー):データ伝送の高速性を示す重要な性能値であり、1秒間に何回シンボル(信号の状態)を切り替えられるかを表す。180 Gbaudは1秒間に1800億回シンボルを切り替えられることを意味する
※4 VπL:光変調器がどれだけ効率よく光を変調できるかを示す性能指標。小さいほど低電圧で効率よく光を変調でき、小型化できることを意味する
※5 TFLN:Thin-Film Lithium Niobateの略。次世代光変調器向け材料として研究開発が盛んな材料
※6 文献で広く報告されているTFLNを用いた標準的な光変調器の代表値(VπL=約2.0Vcm)との比較
※7 MEMS:Micro Electro Mechanical Systemsの略。半導体微細加工技術を用いて作製される、微小な機械構造と電気回路を一体化したデバイス技術
※8 Post deadline paper:国際会議の開催直前までに得られた最新かつ重要な研究成果を対象とする発表枠。一般的に採択率が低く、特に新規性・重要性の高い成果が選ばれる
ご参考
論文情報
S. Yokoyama, H. Sato, G.-W. Lu, T. Okachi, K. Funahashi, K. Watanabe, M. Shimizu, and Y. Tanaka “180-GBaud OOK Modulation Using a KNN Crystal-Based Electro-Optic Waveguide Modulator” in Proceedings of 52nd European Conference on Optical Communications, Málaga, Spain, 2026, PDP-B-6.