新材料を開拓し、次世代エネルギーの実現へ

山崎仁丈教授
英文著者 William J. Potscavage Jr.2021/11/02動画作成者 ICER

新材料を開拓し、次世代エネルギーの実現へ

山崎仁丈教授
英文著者 William J. Potscavage Jr.
2021/11/02
動画作成者 ICER
山崎仁丈
山崎仁丈
教授
九州大学エネルギー研究教育機構
専門分野
材料物性学、エネルギー材料

山崎仁丈
山崎仁丈
教授
九州大学エネルギー研究教育機構
専門分野
材料物性学、エネルギー材料
HP
DB
Pure

、鋼、プラスチック、半導体といった新材料は、発見のたびに社会を大きく変革し、歴史を作ってきました。今、現代社会は、世界が必要とする膨大なエネルギー需要に応えつつ、二酸化炭素排出量を大幅に削減する方法をどうしても必要としています。

九州大学エネルギー研究教育機構の山崎仁丈教授は、「未だ見出されていない無数の材料の中にこそ、環境負荷を劇的に減らす材料がある」と語ります。「必要なのは、新材料の探索スピードを劇的に加速させる新たな手法です」

クリーンエネルギー社会の早期実現を目指し、山崎教授の研究グループは、ペロブスカイトとして知られている無機材料の探索に、人工知能(AI)を活用して取り組んでいます。

新たなペロブスカイトにおいて、プロトン伝導性発現の鍵を握るとAIが判定したスズを指差す山崎教授。研究チームが機会学習を活用して一度の試作で発見し、学術誌ACS Energy Lettersで紹介された

ペロブスカイトと呼ばれる結晶構造を有する化合物の多くは、化学反応を促進したり、エネルギーを蓄えたり、水素といった化学物質からエネルギーを取り出したりすることができます。

「例えば、ある種のペロブスカイトは、太陽光を利用して水を分解し、水素と酸素を生成させることで、太陽エネルギーを水素分子に蓄えます」と山崎教授は説明します。「この水素分子を空気とともにペロブスカイト燃料電池に供給すると、高効率に発電することができ、廃棄物は水のみです」。

このようなアプローチは、従来電池とは異なり、電池における重量やコストの問題を避けながら、再生可能エネルギーを長期間貯蔵・利活用できるため、大きな期待が寄せられています。一方、その普及に当たっては、劣化や効率を改善していく必要があります。

「ペロブスカイト結晶内の原子を入れ替えることで、これらの課題を解決する新材料の開発が可能です。ただ、無数の組み合わせを実験室で試作することは、非常に時間がかかる作業です」と山崎教授は指摘します。「そこで注目したのがAIです」。

燃料電池サンプルの評価ため、試験装置にセットする山崎教授

このアプローチの驚異的な能力を物語る例として、山崎教授のグループは最近、機械学習と呼ばれるAIの機能を用いてエネルギー機能を持った新材料をたった1度の試作で発見することに成功しました。

研究グループのメンバーは、65種類のペロブスカイトにおける既発表のデータと新たに測定したデータを開発したソフトウェアに入力し、新材料の特性を調べました。

8,000種類以上のペロブスカイトの中から、ソフトウェアが導き出した最も可能性のある候補材料を、研究メンバーが実際に研究室で作ってみました。すると、驚くべきことに、これまでには思いも寄らなかった材料において、反応の鍵を握るプロトン伝導性があることが判明したのです。

誰でも、どこからでも、研究室を見学できるように、山崎教授が最近撮影した360°研究室ツアー

「半年かけたデータ収集と、たった1日で行った何千もの仮想材料の特性予測をもとに選別することで、これだというものに出合いました」と山崎教授は言います。「この方法は、それぞれの材料を実験的に検証した場合に比べて、6万倍のスピードです」。

有機分子の分野では、原子の結合数が比較的少なく、構造と機能の関係が分かりやすいため、AIを用いたアプローチは比較的広く使われています。ただ、無機化合物に応用するには、大きな課題がありました。

「無機材料では、結晶中にある数百万個の原子にわずか数個の欠陥があるだけで、材料の特性が大きく変化します。そのため、必要な機能を有する無機材料を予測するモデルを開発するのは至難の技です」と山崎教授は説明します。

研究グループはソフトウェアを公開し、この研究技術はすでに、他の研究者たちも利用できるものになっています。

山崎教授は既知の反応を実現する材料を探す一方で、材料の新たな活用法にも目を向けています。柔軟な発想により、持続可能なエネルギー源から燃料を製造する革新的なプロセスを生み出しました。それは、光や電気ではなく加熱・冷却サイクルを使って反応を起こす全く新しい方法です。

「これまで長く研究されてきた光触媒に匹敵するものの、効率はまだ低いです。でも逆に言えば、研究によって改善する余地がまだまだあるということです」と前向きに捉える山崎教授。

新技術は、自身の研究に取り入れるだけでなく、次世代を担う研究者の卵を材料分野へ導くためにも活用されています。高校生の元へ足を運び、直接対話することに加えて、生徒たちがいつでも研究室を見学できるよう自身のサイトで二つのバーチャルラボツアーが用意されています。

山崎教授のグループがこの手法を発展させて、新材料を予測し、試作していけば、もはや研究室で多くの時間を過ごす必要はなくなってしまうのかもしれません。

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