Research 研究・産学官民連携
大学院芸術工学研究院 デザインストラテジー部門 部門長
兼 学術研究・産学官連携本部アカデミック・アドバイザー
教授 都甲康至
2015年9月、「持続可能な開発目標(17の目標)」が「国連持続可能な開発サミット」において、193国の首脳によって採択されました。この目標は、2030年の目標達成に向けて、私たちがこれから解決すべき社会課題の道筋を示しています。
一方日本の地方都市では現在、人口減少・高齢化・若年人口の流出などによって産業の衰退や雇用減少などが大きな社会問題になっています。そのため新たな発想による産業の創出・集積と雇用増大、若年人口の流出防止を図る社会イノベーションデザインと都市ブランド戦略が、地方都市に強く求められています。
今回は、本学も支援会員となり、産学官連携で取り組んでいる国際コスメティッククラスターの創造を通じて、地方と世界をつなぐグローカル視点による都市ブランド戦略と社会イノベーションデザインで、これからも自然豊かで住み続けられるまちづくりと、持続可能な経済・産業発展を目指している佐賀県唐津市及び玄海町での取り組みを紹介します。
持続可能な開発目標(出典:国際連合広報センター, http://www.unic.or.jp/)
ジャパン・コスメティックセンター(JCC)は、世界最大のフランス・コスメティックバレー協会(CV)と唐津市との協力連携協定を基盤に、「人と環境にやさしく地域資源と優れた技術を活かした国際的コスメティッククラスターの創造」のビジョンを具現化する推進機関として、2013年11月11日に産学官連携によって創立された団体(2016年11月現在:正会員170社・支援会員18団体)で、九州大学も支援会員(JCC理事:都甲康至)として参画し、芸術工学研究院・農学研究院・工学研究院などの研究者が関与しています。
JCCが掲げる「国際コスメティッククラスター構想」は、四つのコスメティック産業分野(美容分野・健康分野・素材分野・交流分野)を柱として、それらの関連産業の集積と雇用の創出を、唐津市・玄海町を起点に佐賀県、ひいては北部九州エリア全域に、欧州とアジアを結ぶコスメティック産業のハブ拠点となる国際コスメティック産業集積地域を形成することを目指しています。その中で芸術工学研究院は主に商品企画やブランディング、情報デザイン、ビジネスモデルデザイン(グローカル・バリューチェーン)、コスメティック人材育成機関の設立構想などの研究活動に関わっています。
欧州とアジア市場を結ぶコスメティック産業のハブ拠点を目指して
化粧品産業クラスター構築に必要な機能
地域産品グローカル・バリューチェーンの構築に必要な研究課題
大学・研究機関ネットワーク
JCCは構想実現に向けて、「国際取引の拡大」、「地域資源の活用」、「関連産業の集積」、「コスメ環境の整備」などの四つの事業に取り組んでいます。具体的には例えば「国際取引の拡大」分野では、フランスのほかスペイン、イタリア、台湾とも協力連携協定を締結し、さらにアジア各国の団体との関係性も構築しつつあります。また「地域資源の活用」分野では、幾つかの契約栽培が成約したほか、地産素材を活用したコスメ商品開発も20件ほど進んでいます。「関連産業の集積」分野では、企業進出案件が少しずつ増えており、九州大学大学院芸術工学府の大学院生(権恵淑:こんへすく)も化粧品販売・コンサルティング会社(株式会社Cosme de Marisol)を2016年6月17日に唐津市で起業しました。
私たちは今後、JCCの活動を通じて、フランスをはじめとする海外の団体・企業とのビジネス交流、アジア市場を中心とするグローバルな市場展開、地域商社の設立準備、コスメティック人材育成機関の設立検討、さらには天然由来の原料研究と高品質の製品開発などに産学官連携で取り組む予定です。
韓国・済州島innisfree済州ハウス視察(2015年8月)
韓国・済州島(株)済州サラン農水産視察(2015年8月)
地域資源を活用して開発された化粧品例
地域政策デザイナー養成講座でのワークショップの様子(2015年5月)
イベント情報(JCCメールマガジン)
http://jcc-k.com/frmMailmag_index.aspx
お問い合わせ先
九州大学 大学院 芸術工学研究院 デザインストラテジー部門 部門長
兼 九州大学 学術研究・産学官連携本部アカデミック・アドバイザー
教授 都甲康至
togo(*)kyudai.jp
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