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音場再生:臨場感を超えた臨場感をめざして

芸術工学研究院 研究紹介

音場再生:臨場感を超えた臨場感をめざして

芸術工学研究院 コミュニケーションデザイン科学部門
教授 尾本 章

 音が存在する場を音場と呼びます。我々の研究室では,この音場を「計測・評価・制御」することを柱に据えた研究を行なっています。特に最近では,これらの要素を包括的に含む「音場再生」あるいは「音場再現」と呼ばれている課題に取り組んでいます。ある音場を別の場所で再現しようとする技術です。古い課題ですが,現在でも進化は続いています。コンサートホールの響きを別の場所で再現するのが典型的な例ですが,実は騒音環境や,車室内音場など,再生の対象は幅広いものです。このような様々な音場に対応した,多用途音場再生システムの構築が我々の主たる課題です。

Photo-1: 24本の鋭指向性マイクロホンアレイによる音場の計測

Photo-2: 24台のスピーカによる再生システム

 音場再生には,大きく分けて,純粋に物理的あるいは工学的に再現を目指す方法と,芸術的に音場を創成する方法の2種類があります。多用途なシステムの総合的な性能を高めるためには,両方の考え方をうまく融合させることが重要であると考えています。具体的には,次の4つの項目が重要であるとの仮説をたてて,それぞれの向上を試みています。
A) 何らかの物理的な原理に基づいた再生を行うこと。
B) 例えば複数で移動する聴取者によって音場が乱されても,必要な情報を提供できる頑健さを有すること。
C) ある方向の音量,周波数特性や響きの程度など,人為的な演出を付加できる余地があること。
D) 没入感や音の定位を向上させるために,映像情報と親和性が高いこと。
これらを効果的に組み合わせることで,臨場感を超えた臨場感の実現をめざしています。

Photo-3: 360度全周映像と組み合わせた再生の例

■お問い合わせ先
大学院芸術工学研究院 コミュニケーションデザイン科学部門 教授 尾本 章