Research 研究・産学官民連携

色彩はコミュニケーション手段としては不完全、だから、一手間加える

芸術工学研究院 研究紹介

色彩はコミュニケーション手段としては不完全、だから、一手間加える

芸術工学研究院 デザイン人間科学部門
教授 須長 正治

 我々が見ている世界は、様々な色によって彩られており、日常生活の中で、例えば、「赤のボールペンをとってください。」など色名をコミュニケーションの手段として当然のように用いています。このコミュニケーションが成立するためには、受け手と人も同じ赤を認識しているという前提が必要となります。しかし、この前提条件は必ずしも成り立ちません。なぜなら、色覚には多様性があるからです。その典型例は色覚異常と呼ばれている色覚特性です。すなわち、色彩はコミュニケーション手段としては不完全であり、一手間加える必要があります。

研究の取り組み

 我々の研究室では、色彩科学、特に色覚の多様性という視点からの色彩デザインのあり方に関する研究に取り組んでいます。つまり、社会にある色彩に関わる問題を研究テーマに落とし込んだり、また、色彩科学の知見をデザインに応用したりしています。
 最近の研究では、色彩デザインを行う際に、2色覚と呼ばれる色覚異常を持つ人の色の見えを基点した配色手法を実用化し、社会実装を行いました。その第一弾が九州大学キャンパス案内図リニューアル計画の色覚の多様性に配慮した伊都キャンパス案内図であり、そのサインは2020年度の日本サインデザイン賞にて入賞および九州地区賞を受賞いたしました。

九州大学キャンパス案内図リニューアル計画

2色覚基点のカラーユニバーサルデザイン配色アプリケーション

 色彩デザインを考える上で、我々が見ている色の世界は外界にはなく、脳が塗り絵を行った主観的な体験の結果であり、その塗り絵のパレットが多様に存在するということを忘れてはならないと思います。

■お問い合わせ先
芸術工学研究院 デザイン人間科学部門 
教授 須長 正治