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物理モデル音源でメロディを奏でよう!

芸術工学研究院 研究紹介

物理モデル音源でメロディを奏でよう!

芸術工学研究院 コミュニケーションデザイン科学部門
准教授 鮫島 俊哉

本研究室では、表記のタイトルを合言葉に、あらゆる楽器の物理モデル音源の作成に没頭しています。それを通じて、図 1に示すような、“楽器の科学”の観点からの本質的な問いに答えたいと考えています。

図 1  本研究の目的

研究の一例として、シンバルを紹介します。シンバルは、非線形性がその本質であることから、非線形打楽器とも呼ばれるユニークな楽器の一つです。

図 2は、シンバルの物理モデル化の方法を示しています。シンバルの本体は、浅い球殻として物理モデル化されることが一般的ですが、本研究室ではそれに加えて、シンバルの支持条件に関わるワッシャーと、打撃条件に関わるバチ(スティックやマレット)の動作方程式を連成させた物理モデル音源の開発を行っています。

図 2   シンバルの物理モデル化の方法

図 3は、シンバルの物理解析の事例を示しています。バチを強く握った場合(Tight grip)と、緩く握った場合(Loose grip)に、シンバルの音のスペクトログラムがどのように変わるのかを計算した結果です。高周波成分が大きな時間遅れをもって現れる様子が見られ、クラッシュ音とよばれるシンバル音の主たる特徴が再現できています。Loose gripの場合には、クラッシュ音の時間遅れが若干大きくなっている様子が見られます。

図 3   シンバルの物理モデル音響合成音のスペクトログラム: バチの握り方の違いの影響

動画 1は、バチとシンバルの振動場の時間発展を示しています。動画には、物理計算で得られたシンバル音も含まれています。シンバルの中心部分がワッシャーで支持されることや、バチの握り方を変えることによる振動様態の変化が、よく捉えられています。

動画 1   バチとシンバルの振動場の時間発展: バチを緩く握った場合、ワッシャーを1自由度機械振動系で表現した場合

これらによって、楽器の形態(形状要因、材質要因、物理状態を融合したありさま)や、楽器の演奏方法が、どのように楽器の音色に影響を与えているのかを明らかにすることができるのではないか、と期待しています。

■お問い合わせ先
芸術工学研究院 コミュニケーションデザイン科学部門
准教授 鮫島 俊哉