Research Results 研究成果

プラズマ照射システインが心臓の虚血耐性を高める

薬学研究院
西田 基宏 教授
2024.12.17
研究成果Life & HealthTechnology

ポイント

  • プラズマ照射システイン液を心筋細胞に与えると虚血ストレスに対して強くなることを見出しました。
  • 低酸素状態の心筋細胞では、硫黄代謝のバランスが崩れる(超硫黄分子から硫化水素への代謝が亢進する)ことでミトコンドリア(※1)でのエネルギー産生が阻害されることを見出しました。
  • プラズマ照射システイン液を低酸素状態の心筋細胞に加えることで硫黄代謝のバランスが正常化し、エネルギー産生能が回復することを見出しました。

概要

 プラズマ(※2)とは、固体、液体、気体に次ぐ物質の第4の状態で、高いエネルギーによって原子から電子が分離することで、電子とイオンに分かれている状態です。近年、常温大気圧でプラズマを生成することが可能となり、高い化学反応場を生み出すプラズマを利用した医療や農学分野への応用研究が進められています。今回、自然科学研究機構生理学研究所/生命創成探究センター(ExCELLS)の西村明幸特任准教授と西田基宏教授(九州大学大学院薬学研究院と兼任)らの研究グループは、東北大学などとの共同で、含硫アミノ酸の1つであるシステインにプラズマ照射を行った溶液には心臓を虚血ストレスから保護する効果があることを明らかにしました。酸素濃度が低下した虚血状態の心筋細胞ではミトコンドリアのエネルギー産生能が低下します。この虚血心筋細胞にプラズマ照射システイン液を与えると、ミトコンドリアのエネルギー産生能が改善されることがわかりました。本研究は、低温大気圧プラズマ技術の生命科学や医療への応用・活用を目指す「プラズマバイオコンソーシアム」のプロジェクトとして行われ、その成果がRedox Biology誌(2025年2月号)に掲載されました。

用語解説

(※1)ミトコンドリア
細胞内においてエネルギー産生を担っているオルガネラ。電子伝達系でエネルギーを生み出している。

(※2)プラズマ
固体、液体、気体に次ぐ第4の物質状態であり、電子とイオンが自由に運動できるようになった状態。テレビや蛍光灯、半導体など産業界では様々な活用が進んでいる。

論文情報

掲載書籍:Redox Biology
タイトル:Non-thermal atmospheric pressure plasma-irradiated cysteine protects cardiac ischemia/reperfusion injury by preserving supersulfides  
著者名:Akiyuki Nishimura, Tomohiro Tanaka, Kakeru Shimoda, Tomoaki Ida, Shota Sasaki, Keitaro Umezawa, Hiromi Imamura, Yasuteru Urano, Fumito Ichinose, Toshiro Kaneko, Takaaki Akaike and Motohiro Nishida
DOI:10.1016/j.redox.2024.103445

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