Research Results 研究成果
ポイント
写真:日本産ヒラタアリヤドリ属9種(左)と寄主アリ(右)との様子
アリの巣にはさまざま生物が共生しており、その現象を好蟻性(※1)といいます。ヒラタアリヤドリ属はケアリ属(Lasius)のコロニーで生活する好蟻性ハネカクシ科(甲虫)の一群として知られており、アリとの関係の複雑さから、進化史研究の材料として魅力的です。しかし、体長が2~3 mmと小型で外見が似ていることから、種の識別は困難で、日本の好蟻性生物のなかでもとくに研究が遅れている一群でした。九州大学大学院生物資源環境科学府博士課程3年の野崎翼氏と、九州大学総合研究博物館の丸山宗利准教授の研究チームは、これまでに両名および昆虫愛好家・研究者の方々が全国各地で採集してきた標本(九州大学総合研究博物館の所蔵)に、国内外の研究機関に所蔵されている標本を加えた、合計2,000個体以上の標本を詳細に調査しました。その結果、日本には9種のヒラタアリヤドリ属が生息し、そのうち3種は新種であることが判明しました。なかでも、ヒラタアリヤドリ属で初めてアメイロケアリ種群を利用する種を正式に記録し、新種として記載しました。あわせて野外や室内で行動観察したところ、種によって寄主アリに対して様々な反応を示すことがわかりました。研究チームは本研究を土台として、DNA解析の手法を用いて、長い歴史の中で寄主アリとの関係性がどのようなパターンで進化してきたのかを解明する研究を開始しています。今後の展開によって、様々な生物の進化研究に波及することが期待されます。
本研究成果はドイツの雑誌「Deutsche Entomologische Zeitschrift」に2025年12月3日(水)に掲載されました。
用語解説
(※1) 好蟻性
説明・・・広義にはアリのコロニーを利用する性質のことで、より狭義にはアリのコロニーがなければ成り立たない生活史を持つことを指す。特にハネカクシ科では他の昆虫に比べて多くの好蟻性種が知られている。
論文情報
掲載誌:Deutsche Entomologische Zeitschrift
タイトル:Taxonomy of Homoeusa Kraatz, 1856 (Coleoptera, Staphylinidae,Aleocharinae) from the East Palearctic: II. Revision of Japanese species
【邦訳:旧北区におけるヒラタアリヤドリ属の分類学II.日本産種の分類学的再検討】
著者名:野崎 翼・丸山宗利
DOI:10.3897/dez.72.158689
お問い合わせ先