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Research Results 研究成果

イグサのある空間で集中力とストレスへの適応力が高まる可能性

日本の伝統素材「イグサ」が人の心理・生理状態に与える影響を科学的に検証
農学研究院
清水邦義 准教授
2026.09.28
研究成果Life & HealthMaterialsEnvironment & Sustainability

ポイント

  • 日本の伝統素材「イグサ」を取り入れた空間が、人の心理状態や脳活動に与える影響を科学的に評価しました。
  • イグサござを使用した環境では、ポリプロピレン製のござを使用した環境と比べて、認知課題への反応が速くなり、課題中および課題後の脳活動にも違いが認められました。また、気分状態の「緊張-不安」がより減少し、「リラックスできる」「香りが好ましい」といった評価も高くなりました。
  • イグサを取り入れた空間が、人の課題への積極的な取り組み(エンゲージメント)やストレスへの適応を支える可能性を示しました。

概要

 日本の住環境で古くから使用されてきた「イグサ」は、畳などの材料として私たちの生活に身近な天然素材です。しかし、イグサのある環境が人の心理状態や脳活動にどのような影響を与えるのかについては、十分な科学的検証が行われていませんでした。
 九州大学大学院農学研究院の清水邦義准教授らと株式会社イケヒコ・コーポレーション(代表取締役 猪口耕成)の共同研究グループは、イグサのござを使用した条件と、香りのないポリプロピレン製のござを使用した対照条件を比較するクロスオーバー試験(※1)を実施しました。
 実験では、若年成人17名に認知課題と休憩を行ってもらい、その間の脳波(EEG)を測定するとともに、課題成績や気分・心理状態について評価しました。
 その結果、イグサ条件では、課題遂行中に脳の特定部位でβ波(※2)活動の増加が確認されました。この結果は、課題への集中や認知的な関与の高まりに関連する可能性があります。さらに休憩中には、イグサ条件においてα波(※3)活動が維持されるとともに、γ波(※4)活動が低下しました。これらの脳波変化は、より効率的な休息状態への移行など、ストレスからの回復・適応に関連する可能性があります。また、課題成績や心理評価においても条件間の違いが認められ、イグサ条件では認知課題への反応時間が短縮しました。さらに、気分状態の「緊張-不安」が対照条件と比べてより減少し、「リラックスできる」「香りが好ましい」といった主観評価も高くなりました。
 これらの結果から、日本で古くから利用されてきたイグサが、単なる床材としてだけではなく、人の心理状態や脳活動に影響を与え、課題への取り組みやストレスへの適応を支える可能性をもつ素材であることが示されました。
 本研究成果は、国際学術誌 Scientific Reports に2026年9月8日(火)(日本時間)に掲載されました。

イグサ(学名 Juncus effusus L. var. decipiens Buchen.)の栽培風景

本研究では、イグサござを敷いた環境が人の心理・生理状態に与える影響を検証しました。

研究者からひとこと

イグサは、日本の暮らしの中で古くから親しまれてきた天然素材ですが、その価値を科学的に評価した研究は多くありませんでした。本研究では、心理評価、脳波、行動指標、揮発性成分の分析を組み合わせ、多面的に評価しました。日本の伝統素材が持つ新たな可能性を科学的に示すことで、健康的で快適な住環境づくりや、人々のウェルビーイングの向上につながることを期待しています。(清水邦義)

用語解説

(※1) クロスオーバー試験
同じ参加者が複数の条件を体験し、それぞれの条件で得られた結果を比較する研究方法です。参加者ごとの個人差の影響を抑えながら条件間の違いを検討できます。

(※2) β波
一般的に注意、覚醒、認知的な活動などと関連するとされる脳波の周波数帯域です。

(※3) α波
一般的に安静時やリラックスした状態などと関連するとされる脳波の周波数帯域です。

(※4) γ波
認知的な情報処理などに関連するとされる高周波の脳波活動です。

論文情報

掲載誌:Scientific Reports
タイトル:Stress resilience and engagement enhancement under the usage of Igusa (Juncus effusus L. var. decipiens Buchen.) mat: a crossover study
著者名:Fadilla Zennifa, Yanli Xu, Akiko Isa, Erika Tomimatsu, Ziyou Xu, Yousuke Konno, Masataka Ikegami and Kuniyoshi Shimizu
DOI:10.1038/s41598-026-47520-8