Research Results 研究成果

福島原発から飛散した高濃度放射性セシウム含有微粒子の定量法を開発

2018.05.22
研究成果Physics & ChemistryEnvironment & Sustainability

 九州大学大学院理学研究院の宇都宮聡准教授、理学府修士2年の池原遼平らの研究グループは、福島第一原発から放出された高濃度放射性セシウム含有微粒子(CsMP)の簡易定量法「QCP法」を開発しました。筑波大学、東京工業大学、Manchester大学、Nantes大学、Stanford大学との共同研究の成果です。
 2011 年の福島原子力災害により放出された放射性セシウムには水に溶けやすい形態と溶けにくいガラス質のCsMPの二種類があります。CsMPは数ミクロン程度と小さいですが、通常の汚染土壌と比べて非常に高い放射能密度(~10の11乗 Bq/g)であり、その性質を利用してCsMPの分別方法を考案しました。
 本論文では、オートラジオグラフィーという放射能を可視化できる手法をもとに、粒子の放射能を測定してCsMPと判別できる「しきい値」を確立しました。実際に福島の表層土壌に適用したところ、全放射能の内CsMPからの放射能が8-38%を占めること、CsMPが最大1020個/g存在することが分かりました。QCP法は一定条件のもと様々な環境の試料に適用できることから、現在、身の回りにCsMPが何個あるのか、CsMPがどう分布しているのかが分かります。また、災害後に採取された試料の分析を時系列で行うことで、自然界でのCsMPの移行挙動が分かってくると考えられます。さらには、除染や汚染土壌の処理の際に不安視されるCsMPの存在量が分かり、安全性の確認に役立つと期待されます。
 本研究は、文部科学省の科学研究費挑戦的萌芽研究(16K12585)・公益財団法人三菱財団自然科 学研究助成(29102)の支援を受けて行われたものです。また、本研究成果は、2018年5月22日(火)(日本時間)にアメリカ化学会誌「Environmental Science & Technology」に掲載されました。

参考図 各粒径における放射性粒子の形態を分析した結果、粒径が114 µm未満の画分に含まれる0.06 Bq以上の放射性粒子がCsMPの取りうる存在領域であるということが分かります。右下図は、福島県長泥の表層土壌におけるオートラジオグラフィー像です。ピンク矢印をつけている点が、CsMP存在領域内の放射能に由来するスポットで、数多くのCsMPを含んでいることが確認できます。

研究者からひとこと

福島第一原発から放出された非常に放射能密度が高いCsMP(セシウムボールと呼ぶ人もいます)が環境中に何個存在しているか、QCP法で分析できるようになりました。影響が懸念されるCsMPが屋外、屋内、山、川など様々な環境で何個存在しているか分かってくると思います。

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