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本学教員が「日本学術振興会賞」受賞者に決定しました。「日本学術振興会賞」は、我が国の学術研究の水準を世界のトップレベルにおいて発展させるために、創造性に富み優れた研究能力を有する若手研究者を早い段階から顕彰しその研究意欲を高め研究の発展を支援していく目的で、平成16年度に創設された賞です。
量子重力・量子多体系の境界領域における新手法の開発と応用
楠亀裕哉氏は、量子重力と量子多体系という異なる理論物理分野の境界領域において、新しい理論的手法を開発し、多くの独創的成果を挙げている。博士課程在籍時に2次元共形場理論の共形ブートストラップを解析的に解く独創的手法を単独で開発し、以後この手法は世界中の研究に広く応用されている。その後も量子重力、量子情報、量子多体系の境界領域で数々の重要な成果を上げ、ブラックホール合体過程の解析法の確立や、量子もつれエントロピー解析によるトポロジカル相の理解など、多分野に波及する発見を導いた。さらに、ホログラフィー原理を用いてエネルギーと情報の透過率の新しい不等式を導出するなど、素粒子物理と物性物理を橋渡しする独創的研究を展開している。理論物理学に新たな枠組みを切り開く先駆的研究者であり、教育面でも後進育成と国際的研究交流に尽力している。将来の更なる飛躍が強く期待される極めて有望な若手研究者である。
異なる幹細胞タイプの共存・協働に着眼した組織恒常性・老化の研究
成体では、絶えず新しい細胞が供給されるおかげで、器官および組織に構造的・機能的な秩序・安定がもたらされる。そうした恒常性の原動力として知られる未分化な幹細胞について、旧来は「分裂頻度が低い・増殖速度が遅い」と信じられてきた。そして高頻度分裂・高速増殖を示すのは若干の分化傾向を有する非幹細胞であると思われてきた。佐田亜衣子氏は、表皮組織の幹細胞には「分裂頻度が高い・増殖速度が速い」タイプもあることを留学中に見出したが、その発見を帰国後、研究室主宰者として大きく発展させ、若齢者の皮膚における表皮組織の正常なターンオーバーには前者(既知であった低頻度分裂タイプ)と後者(新発見の高頻度分裂タイプ)の協働が重要であること、高齢・老化の皮膚で認められるようなレジリエンスすなわち抵抗性の低下には後者(高頻度分裂タイプ)の不足が関与していることを見出し、その分子メカニズムの一端を明らかにした。表皮システム(の老化)の解明は、社会への波及力も大きい。
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