Notices お知らせ
東急建設株式会社(本社:東京都渋谷区、社長:寺田光宏、以下、東急建設)は、新規事業案「地球動物園」の一環として、九州大学熱帯農学研究センター(福岡市西区、センター長:百村帝彦)と共同で、日本国内初となる使用済み紙おむつを活用した新たな緑化材の培養実験を開始しました。本実験は、紙おむつを分解するとともに、植物の育成を促す作用がある土壌微生物「トリコデルマ菌」の培養技術を開発するものです。
東急建設は、2030年度を目標とする長期経営計画において、建設事業にとどまらない新たな事業創出に取り組んでいます。
「地球動物園」は、使用済み紙おむつの水溶化処理過程で発生した汚泥を有機肥料として培養土や緑化基盤材などの元肥を生産する新規事業であり、2024年度から、ほか2社と連携して事業化に向けた研究を進めています。
東急建設では、「地球動物園」の研究で得られつつある知見を活かし、使用済み紙おむつのさらなる有効活用法を模索してきました。
東急建設は、使用済み紙おむつのさらなる処理方法を模索している中で、熱帯農業分野において専門性と実績を有する、九州大学熱帯農学研究センターより農業現場で広く利用され、植物の生育を促す糸状菌※の一種である「トリコデルマ菌」を活用する提案を受けました。
これを受けて、東急建設と九州大学熱帯農学研究センターは、使用済み紙おむつをトリコデルマ菌の育成素材として活用することが国内初であり、この緑化材培養技術の共同実験に着手しました。
※糸状菌とは菌糸を形成する菌で胞子によって増殖し、一般的に「カビ」と呼ばれているものです。
実験状況
トリコデルマ菌
本実験で期待される効果
本実験では、トリコデルマ菌を使用済み紙おむつに接種し、その有用性を検証します。期待される主な効果は以下の通りです。
① 紙おむつに含まれる有機成分の分解促進
② 植物の根組織の成長促進
③ 土壌病原菌類の抑制による土壌病害の軽減
これらの効果により、使用済み紙おむつを、有用な緑化資材として活用できる可能性があります。また、糸状菌を使用した自然由来の処理方法によりCO₂排出量の削減に加えて、植物の育成環境の改善や緑化推進に資する循環型資材の生産が可能となります。
トリコデルマ菌について
トリコデルマ菌は、自然界の土壌に広く分布する真菌類の一種で、特に植物の根のまわり(根圏)に多く生息しています。この菌は、植物にとって有害な病原菌の侵入や繁殖を抑える働きがあり、天然のバリアのような役割を果たします。
また、植物の根組織の成長を助けて栄養吸収を促進し、作物全体の生育を向上させる効果があります。農業現場では、土壌病害の防除や収量向上のために活用されており、安全性の高さから環境負荷の少ない「微生物資材」として注目されています。
人や動物への毒性も低く、持続可能な農業や緑化を支える重要な微生物として、国内外で研究と実用化が進められています。
今後の展望
東急建設は、本実験で得られる知見を活かし、建設事業とのシナジーが見込まれる緑化技術の展開を目指します。商業施設の屋上緑化や、河川・鉄道法面などへの応用を通じて、環境に配慮したまちづくりに貢献してまいります。
以上
「地球動物園」は、東急建設株式会社の登録商標です。(商標登録番号第6753112号)
参考リリース
「使用済み紙おむつの有効活用に挑む新規事業案が 内閣府「第3回 総合知活用事例」に採択」
(2025年7月8日)
https://www.tokyu-cnst.co.jp/topics/2808.html
「使用済み紙おむつから生成したオーガニック培養土の 植物生育実験で良好な結果を測定」
(2025年1月15日)
https://www.tokyu-cnst.co.jp/topics/2715.html
「使用済み紙おむつを活用したオーガニック培養土生産の事業化に向けた共同研究を開始」
(2024年9月17日)
https://www.tokyu-cnst.co.jp/topics/2664.html
東急建設株式会社について
東急建設は「安心で快適な生活環境づくりを通じて一人ひとりの夢を実現します」を企業理念として、渋谷や東急線沿線の開発で培ったまちづくりの技術・ノウハウを活かし国内外で建物建設やインフラ構築を行う総合建設会社です。2030 年の企業ビジョン「VISION2030」の達成に向けた長期経営計画では「脱炭素」「廃棄物ゼロ」「防災・減災」(3つの提供価値)を戦略の軸に掲げ、「人材」と「デジタル技術」を競争優位の源泉として、社会課題解決と持続的な企業価値向上に取り組んでいます。
所在地:〒150-8340 東京都渋谷区渋谷1-16-14 渋谷地下鉄ビル
URL:https://www.tokyu-cnst.co.jp/
九州大学熱帯農学研究センターについて
九州大学熱帯農学研究センターは、熱帯・亜熱帯地域の生物多様性の喪失や森林資源の消失、地球温暖化や降雨パターンの変動による水資源の不足、人口増加に伴う食糧不足等の問題の解決を目指しています。その為、熱帯・亜熱帯諸国の研究者や国内の他大学の研究者らと国際的な共同研究を実施し、学際的研究で得られた成果を社会へ普及しています。また熱帯・亜熱帯地域の国々の農林関連行政機関、現地NGO、地域住民、研究者らと協力して国際協力も実施しています。
所在地:〒819-0395 福岡市西区元岡744
URL:https://www.agr.kyushu-u.ac.jp/tropic/
熱帯農学研究センター 教授
松元 賢
電話:092-802-4834
Mail:mmatsu★agr.kyushu-u.ac.jp
※メールアドレスの★を@に変更してください。